大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 平成10年(行ツ)138号 判決 1998年8月31日

神戸市兵庫区材木町三番一号

上告人

株式会社三和

右代表者代表取締役

福井文望

右訴訟代理人弁理士

倉内義朗

広島県福山市鞆町後地二六番地の一二二

被上告人

光栄金属工業株式会社

右代表者代表取締役

早間榮作

右当事者間の東京高等裁判所平成八年(行ケ)第七八号審決取消請求事件について、同裁判所が平成一〇年一月一四日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人倉内義朗の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一)

(平成一〇年(行ツ)第一三八号 上告人 株式会社三和)

上告代理人倉内義朗の上告理由

第一、判決の事実として記載の通り、被上告人は、適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日及び準備手続期日に一度も出頭せず、答弁書その他の準備書面を全く提出していない。

第二、当事者が、口頭弁論期日または弁論準備手続期日において相手方の主張した事実を明らかに争わない場合には、争う意思がないものと解して、この事実を自白したものとみなすことができる(民事訴訟法第一五九条第一項)。

第三、ところが、判決中の当裁判所の判断によると、「特許庁における手続の経緯、本件発明の要旨及び審決の理由が原告主張のとおりであることは、被告において争わないところであり、これによれば、被告は本件において、このような内容をもつ審決という行政処分が原告主張のとおりになされたことは自白したものとみなされる。」とされている。

つまり、審決という行政処分につき自白したものと認定されている。民事訴訟法第一五九条第一項の趣旨は、当事者が口頭弁論において、その裁判における相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その裁判における事実を自白したものとみなす規定でありましょう。当裁判所のように、前審の行政処分についてのみ自白したものだとの判断は当たらないと考えます。このように本件の判決は、被上告人のいわゆる自白の擬制を、誤った解釈の下に行われた不当なものであります。

審決取消裁判が一般民事訴訟と区別されるべき理由は何もない。つまり、いわゆる擬制自白も本件裁判において否定されるべき理由はないのであります。

しかも、本件裁判所の判断には審決を擁護する恣意的な理由が述べられているに過ぎない。善良なる国民の声をきちっと聞くべきである。被上告人も善良なる国民で、上告人の主張に従いたい、との意思表示を不出頭という形を表明しているにもかかわらず、裁判所が勝手に被上告人になり代わって理由を述べられ、上告人の主張理由はなりたたない、との判断を被上告人を差しおいてしておられます。口頭弁論を基本とする民事訴訟において、とうてい許されるべきことではありません。

第四、上告人は本件裁判において、審決に技術事項の誤認があったと、主張している。この主張に対し、被上告人は出頭もせず、争ってもいないのに上告人の主張に理由がないと判断された。この技術事項についての判断において、審決は明らかに誤りがある上に、被上告人は本件裁判においてこれを争わず、上告人の主張を認める自白をしているにもかかわらず、上告人の主張に理由がないとの判決がなされた。

第五、このように本件判決は法律違反がある上に不当なもので、棄却されるべきであります。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例